野生のイルカとの出会い~人生の転機となる

カテゴリー【旅✖️神様】の記事は、様々な人の旅先で起きた奇跡の瞬間を、旅人独自の表現方法でお伝えしている記事です。この記事を読んで、できるだけ多くの人に同じような奇跡の体験をしていただきたい、そのために様々な場所へ旅に出てもらいたい、その思いで伝えています。

 

野生のイルカと泳ぎたい

私は前世はイルカだった。

そう思えるくらい、20歳の頃の私はイルカと泳いでみたくて仕方がなかった。

あのつるつるとしたゴムのような不思議な体に、優しくもあり、時にぎょろっと見てくる鋭い目。そして何よりあの優雅な泳ぎ。私の憧れだった。

何とかして一緒に泳いでみたいとネットで検索をしていたところ、日本でも野生のイルカと泳げることを知った。

それが東京から南へおよそ200キロのところにある、伊豆諸島御蔵島だ。

断崖絶壁に囲まれたこの小さな島の周囲に、野生のバンドウイルカが約120頭棲んでおり、シュノーケリングで一緒に泳ぐことができるのである。群れがたくさんあるので、イルカとの遭遇率はほぼ100パーセント。

初めての御蔵島

友人と二人で初めて行った時、まずは泳ぐこと自体が大変だった。というのも、イルカがいるのは島の周囲とはいえ立派な外洋。波やうねりがあると体力が奪われたり、酔ったりすることもある。

だが、初めて海の中で野生のイルカと出会えた瞬間の感動は今でも忘れられない。

小さな船に乗って島の周りを進むとすぐにイルカの群れが見つかる。船長がイルカの進路を見極め、海に入るタイミングを指示してくれる。一斉に海に飛び込み、イルカがやってくる方向を見つめると、まずはイルカの歌うような高い鳴き声が先に聞こえてきた。胸がどきどきしてそれだけで呼吸が速くなる。

やがて想像以上にたくさんのイルカの姿が現れた。感動のあまり、海の中で歓声を上げ、夢中で素潜り開始だ。イルカの気分によっては、そのまま通過することもあるが、たいていの場合はフレンドリーに遊んでくれる。

野生なので水族館のイルカとは比べ物にならないくらい筋肉質の体で、触れそうなくらい間近を泳ぐ姿は人間よりはるかに大きかった。

すれ違いざまに目が合い、行ってしまうと思ったら引き返してきて周りをぐるぐる泳ぎ始めたイルカがいた。私に興味を持ってくれたのだ。一瞬でも友達になれたかのようにしばらく一緒に泳いで遊んだ後、イルカたちはすーっと海の彼方に消えていく。

一回2時間のドルフィンスイムで、平均5回くらいはこんな風に泳ぐことができる。ドルフィンスイムが終わった後は、体はとても疲れているものの、夢にまで見たイルカと一緒に泳げた幸福感に満たされた。

それ以降はまってしまい、友人と私は毎年夏になると御蔵島を訪れるようになった。

運命の出会い

御蔵島に通い始めて3年目の夏。いつも通り定期船に乗りこむ際、海況が悪いため御蔵島には就航できないかもしれないという状況になった。島には入り江がないため、海況に左右され接岸できないことが多々あるのだ。船は夜に東京港を出発し、丸一日かけて三宅島、御蔵島、八丈島を往復する。往路で御蔵島に着けない場合、折り返し地点の八丈島で下船するか、そのまま復路で御蔵島で下船しても良い。復路でも接岸できなかった場合、三宅島で下船するか、東京港に戻るという選択肢もある。

その年は結局復路でも下船できず、どうしようか悩んでいたところ、隣にいた一人の旅行者の男性が話しかけてきた。偶然同い年だった彼も御蔵島に行く予定だったとのこと。これが数年後、私の夫となる人との運命的な出会いである。

教えてもらった情報では、三宅島から漁師にお願いして漁船をチャーターできれば、御蔵島まで乗せていってもらうことができるそうだ。

初めての事態に不安だった私たちは意気投合し、周りの人についていって三宅島で下船し、漁船に乗り込んだ。当然海は荒れているのでものすごく揺れたが、まるでアトラクションのように楽しかった。

東京を出発して丸一日、何とか無事御蔵島に着くことができ、翌日には目当てのドルフィンスイムも楽しむことができた。その男性とは宿が違ったが、帰る日が一緒だったので、また定期船の中で出会うこととなった。

東京までおよそ8時間の道のりを、たくさん喋って過ごした。お互い住んでいる地域は関東と中部で離れているが、それからメールや電話をするようになった。

1年が経った頃、今年の夏は予定を合わせて一緒に御蔵島に行こうと約束をし、東京港で再会。その後自然と遠距離で付き合うこととなった。

そして、その翌年に結婚したのである。

あの時定期船が御蔵島に接岸できていれば出会わなかったであろう人。

一緒に漁船で荒波を乗り越えたという共通の思い出から仲が深まり、イルカが大好きという趣味も合う人と出会えて、最高に幸せだ。お互いイルカが恋人だったが、それ以上に大切な人を見つけることができ、この出会いに感謝している。