今まで交通事故とは無縁だった自分が経験した海外での交通事故

カテゴリー【旅✖️神様】では、様々な人が体験した旅先での奇跡の瞬間をお伝えしています。この体験談を読んで、旅で起きる様々な奇跡の瞬間を感じていただきたい、そして実際に旅に出て奇跡の瞬間を体験してもらいたい、その思いで伝えています。

 

北京での生活

私は学生時代、中国の北京に1年間留学していた経験がある。もともと中国語に興味があり、どうせなら現地で生の中国語に触れたいと思い、留学しようと決心した。

海外で1年間暮らすというのは今回が初めてで、非常にワクワクしていた。留学前にも旅行で一度北京を訪れたことがあったが、それもほんのわずかの間だけだったので、行ける場所も限られていた。

しかし、今回は1年間と時間にも余裕があったので、時間の許す限り、北京のいろいろな観光地を巡った。天安門広場や紫禁城(中国では「故宮」という名で知られる)といった代表的な場所はもちろんのこと、北京オリンピックが開催されたオリンピック公園や、その規模の大きさで知られる「頤和園」という世界遺産に登録された公園にも行った。他にも見どころはたくさんあるので機会があったらまた訪れたいと思っている。

北京の交通事情

さて、その北京であるが、さすが中国の首都というだけあって、さまざまなものの中心地である。そのうちのひとつとして、交通網についても触れておかなければならない。

北京は中国のあらゆる交通の中枢である。寝台列車や新幹線「高鉄」の発着駅である「北京駅」には北京から中国国内各地へと向かう列車が毎日のように数多く出入りしており、無数の人々でごった返す。また、北京は地下鉄が非常に発達しており、合計で16もの路線が北京の中心やその周囲に張り巡らされている。

出勤ラッシュや帰宅ラッシュにぶつかると、地下鉄がいくらあっても足りないのではないかというくらい物凄い数の人々が地下鉄を利用する。私も一度その時間帯に地下鉄を利用したことがあるが、人が多すぎて電車に乗り込めず、何度電車を見送ったことか。

では、少し視点を変えて一般道は普段どのようになっているのか見てみることとしたい。

一般道についていうと、確かにその交通量の多さには驚かされるのはもちろんだが、それ以外に注目したいのが、車の運転の荒さである。制限速度などそっちのけで、とにかく飛ばすのである。

そして、とにかくお互いに譲ろうとない。皆が我先にと車を進ませようとするので、そこで車が進めなくなるとクラクションが鳴りやまないほどの騒ぎである。

しかし、不思議なのはどんなに車を飛ばしていようと、どんなに運転が荒かろうと事故が発生しないというところである。周りで見ていてもこれは明らかにぶつかるだろうと思っていても、そこはうまく避けるから、ただ単に運転が荒いとも言えない気がした。

まさか自分が事故に巻き込まれるとは

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ただ、そうは言っても、事故が絶対に起きないという保証は誰にもできない。そして、事故は起きないだろうと思っていた自分がまさか事故に巻き込まれるとは想像もしていなかった。

あれは、北京市内に住む友人の家から留学先の大学に帰るときに起きた。時間で言うと夜の9時は回っていただろう。

さすがの大都市も夜になると交通量もかなり減り、車を飛ばすような様子もあまり見られなかった。私は友人の家のそばで路線バスが来るのを待ち、そのバスに乗って大学まで戻ることにしていた。これが全ての始まりであった。

私はバスに乗り込んだ。バスにはほとんど人が乗っておらず、がらんとしていた。

私は一番前の席に座った。

特に何もすることがなかったので、携帯電話を開き、友人とメールでやりとりしたり、音楽を聴いたりと完全に携帯に夢中になっていた。

そして、10数分が過ぎた頃であっただろうか、「キキキーッ」というブレーキを踏む音が聞こえたかと思うと、バスが物凄い音を立てて急停止した。

私上半身は一瞬前のめりになり、すぐにもとの体勢に戻ったが、何が起きたのか全く分からなった。そして、運転席の方に目を移すと事の重大さにやっと気づいた。

自分の乗っていたバスが、前に停車していたバスに衝突したのである。

バスのフロントガラスは見るも無残に割れ、よく映画の場面で見かける蜘蛛の巣のような割れ方をしていた。これには一瞬言葉を失ったが、幸い運転手を含め乗客は全員無事であった。

ただ、もしもこれが昼間の混雑するバスのなかで発生したらと考えると体が震えるほど恐ろしい。

私はすぐにバスを降り、自分が乗っていたバスの運転手と前で停まっていたいたバスの運転手が話し合いをしているのを横目で見ながら、最寄りの地下鉄の駅に向かった。

そして、無事に大学に戻ったのである。