謎の男性に救われルーレットで大当たり

わたしは海外旅行が大好きで、旅行先の中で最もエキサイティングな経験をできたのはオーストラリアである。

オーストラリアはメルボルンやブリスベン、シドニーといった大都市が世界的に名が知れているが、これらのいわゆるメジャーな都市はすべて国土の東側に位置してあり、典型的なオーストラリアの風土を楽しみたいという人は一般的にこのあたりのエリアに渡航することが多い。

しかし、ミーハーなものをあまり好まない私はあえてオーストラリアの西側に向かうことを決め、西オーストラリアの州都であるパースに旅行しに行くことにしたのであった。

オーストラリアはその広すぎる国土ゆえに大都市は海路を利用できるように海に面した場所にあることが多い。パースも例に違わず海に面した港町で、大きな川が街のランドマークになっているような穏やかで過ごしやすそうな土地柄であった。

ここ、パースは数年前に世界の住みたい街ランキングでトップに入選したこともあるくらい世界的にクオリティーの高い街として知られており、実際わたしがパースに渡航しようと決めた理由もこういったランキングに選ばれるくらいきれいな街並みをみてみたいとおもったのがきっかけのうちのひとつだ。

しかし、いざパースに着いてみると、確かに街並みはきれいで公共交通機関も発達しているので、ぶらり旅に困ることはないが、正直これといって圧倒的な見どころがない。ノースブリッジという歓楽街やペンギン島と呼ばれる観光地なんかは割と近場にあるものの、満足に楽しむためにはいずれもお金がかかりすぎるため却下。渡航したはいいものの期待が大きすぎたせいかパースの街並みに大きな感動を得ることができなかったわたしは、そこで第二の目的のほうへシフトしたのであった。

前述にもあるようにパースに渡航した理由としては、世界住みやすい街ランキングで上位に選ばれていたからというものがあったが、決してわたしはこれだけが目的で西オーストラリアにやってきたわけではないのである。

実はもう一つ大きな目的があり、それはパースでカジノに行くことであった。パースには南半球最大ともいわれている大規模カジノリゾートがあり、この施設を訪れることを観光ツアーの目玉にしているところもあるくらいらしい。

パースで特にすることもなくなったわたしは満を持してカジノに向かい、ちょいと運試しをすることにしたのだ。カジノは都心からアクセスがよく、パース駅からなら片道200円程度で行けてしまう。

いざカジノに行ってみたはいいものの、実はわたしはこれまでカジノで遊んだことなど一度もない。ブラックジャックやバカラのようなカードゲームはルールを予習していなかったので、正直手を出すのは勇気がいった。また、スロットは日本のものとは大きく違い、なんならカードゲームよりルールがわからなさそうである。

そんなこんなで、わたしは見た感じ最もルールがシンプルであったルーレットに挑戦することを決める。実はカジノに入る前に、自制心がきくように掛け金は100ドルまでと自分の中でルールを決めて入店したのであるが、よくわからずこのルーレットにかけているうちにたったの30分ほどで50ドルをすってしまった。

まぁ、ギャンブルなんてこんなものかと思い、やけになったわたしは残りの50ドルを広く張って、その一回が終わったら潔く帰ろうなどと考えた。

すると隣にいた男性がいきなり「そんな張り方では全然なっていない」と絡んでくる。そして男なら一点張りあるのみなどといって私のチップをおもむろに集めだし、勝手に勝機の薄い一点にかけてしまった。

普通であれば何やってんだと文句のひとつもいうところですが、なにせこの時のわたしはやけになっている。

もうどうでもいいやなどと思いながら彼の賭け方に従ったが、なんと驚くことにこの采配が的中してしまった。

これにはさすがの私も驚き、お礼を言おうかと思ったが、気づいた時にはその男性はすでにどこかへ行ってしまっていた。

こうして謎の勝利をつかんだわたしは勝ったお金でオーストラリアグルメを満喫し、数日後旅の思い出につけながら帰路に就いた。