北京〜上海間の5時間の旅

カテゴリー【旅✖️神様】では、様々な人が体験した旅先での奇跡の瞬間をお伝えしています。この体験談を読んで、旅で起きる様々な奇跡の瞬間を感じていただきたい、そして実際に旅に出て奇跡の瞬間を体験してもらいたい、その思いで伝えています。

 

つい先日の話だ。

僕は用があって2週間中国にある研修に行っていた。中国には一度旅行で行ったこともあり、日本から約3時間かけて飛行機に乗るなんてことには慣れていた。

現地での研修・プログラムを終えて二、三日間余っていた僕は上海へ高鉄(新幹線)のチケットを取った。

研修があった北京から上海までは約5時間。飛行機で行けばさほどかからないが、時間もたくさんあることだったし5時間ゆっくり旅しようと思った。ただ、5時間というのは思っていたよりも非常に長い時間であり、乗る前の僕に取ってそれが苦痛であったということは知るよしもなかった。

故宮や天安門・北京の銀座とも呼ばれる王府井などに立ち寄ったあとに軽くごはんを済ませ、重たいキャリーバッグと共に新幹線に乗り込んだ。

周りは現地の中国人はもちろん、観光目的の外国人などたくさんの人でごった返しており頭がクラクラした。だが、5時間すれば夢の上海タワーが観れると思うと少しは気が楽になったような気がした。

上海で思う存分に楽しむ為、上海の海上クルーズツアーのようなものを体験しようと思っていて、やりたいこと・行きたいとこもたくさんありとにかく楽しみな気持ちと、多すぎる人・四方八方から聞こえてくる中国語に耳が痛くなるような感覚が混ざり合って複雑な気分だった。

しばらく座席に座っていると、中国人女性の(多分スタッフか駅員だと思われる)アナウンスが聞こえて、新幹線はゆっくりと前に進みだした。どこかで小さい子供が新幹線の早さに歓喜する声や友達と連絡をしているだろうと思われる女性の声などが聞こえ、それだけで中国に来たんだ、遠いところに来たんだと実感していた。僕は北京で行動しすぎたこともあり少しばかり仮眠をとった。

2、3時間したところでふと目を覚ました。あたりは一面畑の、自分の居場所がわからないような何処かを新幹線は颯爽と走っていた。中国に来てから、観光地やオフィス街・たくさんの車やバイクしか見ていなかったもので、なぜかその景色に見とれていた自分がいた。

出発前は曇り空だったのがいつの間にか太陽が雲の中ギラギラとひかっていたことを覚えている。

しばらく外を眺めていた時だった。

雲の中でひかっていた太陽が急に顔を出した。そして灰色の雲に一筋の光が差し込んだ。

その光景は驚くほど綺麗でだった。その一筋の光をはじめとして、だんだん幾筋もの光が雲から突き抜けて地上へと足を下ろしていったのだ。

おもわずスマートフォンのカメラを手にし写真を撮った。そしてその光景に見とれたまままた僕は知らぬ間に眠りについていた。

しばらくして目を覚ますと、いつの間にか上海に着いていて新幹線内には人がいなくなっていた。

あのときの景色が見たいと思いスマートフォンを開いたのだが撮ったはずのあの光景は取れておらず、写真はどこにも存在しなかった。

あの光景は何かの前兆だったのか。

もしくは何かのメッセージであったのか。

僕はなにもわからないまま変な気分で上海での1日目を過ごした。

あれ以降、二ヶ月ほど経とうとしているがいまだにあの景色、あの光景に出会ったことがない。

帰国した今も、電車や新幹線に乗るたびにあの光景に出会わないかと楽しみにしていたりカメラを構えて景色を眺めたりするのだが、なかなか奇跡は現れてはくれないものである。

今後時間があれば今度は長期間、約一、二ヶ月ほど中国に滞在してみようと思っている。

あの景色に巡りあえることで生活の何かが変わるかもしれないし、ひょっとすると今後僕の人生は大きな何かに遭遇するかもしれない。

そう思うと胸がドキドキして仕方がない。僕は雲から優しく差し込んだ幾多もの光を忘れることはないだろう。

奇跡とはまさにこのことであったと深く思った。